【第1章】

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しかしよくよく辞令を読むと、辞令には確かにこう書かれていたのだった。 “二子新司を2017年7月1日付で「人事部 人材開発課」に配属するものとする。” この辞令を初めて見た時、新司は自分の目を疑って思わず二度見したものだ。 “俺が「人材開発課」だって?人事の経験が皆無の俺が?大学だって経済を専攻していたし…。簿記系の資格しか保有していないのに。異動の希望を出したわけでもない。” 社長直轄の人事部人材開発課。実は、株式会社爽快の人材開発課は新設されたばかりだった。 人事部は元々常務執行役員である小暮と人事部長の青葉という管理職のラインにより統治されていたのだが、この度、経営改革の一環として、よりトップダウンによる意思決定を速めるため、実態はほぼ社長の直轄となった当部が新設されたというわけだった。 新司はいわゆる社内きってのエリートコースに図らずも乗ってしまった、というわけなのだった。 何せ、人材の採用であるとか、その配置、開発などの人材戦略は会社の根幹に最も大きな影響を及ぼす最大級の経営マターである。 つまりそこで働く者は社長と経営のビジョンを共有していなければならない。人事部人材開発課が出世頭と言われるゆえんだ。     
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