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「素直に喜べ。お前だって酔狂であんな事した訳じゃないだろ。俺も最初にお前の実験内容を聞いた時は、悲観し過ぎてイカレちまったかと思ったが。そのことも含めて謝る。そして祝福する。良かったな、岡田」
『……』
電話の向こうで親友の岡田が感極まって絶句しているのが分かった。
先ほど来たカイトと名乗った青年は、一目では人間と区別のつかないほど精巧に出来た量産型労働アンドロイドだった。
現代ではAIを搭載したアンドロイドを労働者の代わりに使用することはどの企業でも一般的で、そしてそれを設計、生産しているのは他でもない、岡田の製作所だった。
若い頃の岡田の夢は、人の感情に極めて近いAIを生み出すことだった。感情を持って話せるロボットは、きっとこれからの社会に必要になって来る、と。
けれど平成中期のあの時代に、それはまだ夢物語だった。更に、労働させるロボットに人間の感情は不要だとスポンサーからも資金が降りず、倫理委員会からも眉を顰められた。
家族を養うため、岡田は夢を凍結させ、労働型アンドロイドを量産する工場を立ち上げたのだ。
けれど工場が軌道に乗りかけた45歳の時、愛息子の岡田悠斗が交通事故に遭った。
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