11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
――あの方が好む匂いを、この場所で感知するとは、想わなかった。
テルケダが見つけたのは、キャンピングタイプの小型車両。全体のフォルムから、全自動運転は搭載されているものの、少し古い型であると判別できる。
気になるのは、そこからかすかに漂う、あの匂い。
「……どうして」
近寄ると、運転席とは別に、車体後部にドアがついている。
その横に小さな液晶板があり。
「……」
すっと、その液晶板の下にあるベルを、テルケダは押していた。
いつもの彼女なら行わない、不審な存在との接触を求めて。
ベルを押すと瞬時に、パシュッと軽快な音が鳴り。
「いらっしゃいませ♪」
開かれたドアの向こうで、ほがらなかな笑みを浮かべながら、女性が現れる。
「移動書店・ウィンクルムへ、ようこそ♪」
まるで、テルケダが来るのを待っていたかのように。
最初のコメントを投稿しよう!