ウィンクルム

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 ――あの方が好む匂いを、この場所で感知するとは、想わなかった。  テルケダが見つけたのは、キャンピングタイプの小型車両。全体のフォルムから、全自動運転は搭載されているものの、少し古い型であると判別できる。  気になるのは、そこからかすかに漂う、あの匂い。 「……どうして」  近寄ると、運転席とは別に、車体後部にドアがついている。  その横に小さな液晶板があり。 「……」  すっと、その液晶板の下にあるベルを、テルケダは押していた。  いつもの彼女なら行わない、不審な存在との接触を求めて。  ベルを押すと瞬時に、パシュッと軽快な音が鳴り。 「いらっしゃいませ♪」  開かれたドアの向こうで、ほがらなかな笑みを浮かべながら、女性が現れる。 「移動書店・ウィンクルムへ、ようこそ♪」  まるで、テルケダが来るのを待っていたかのように。
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