644人が本棚に入れています
本棚に追加
/942ページ
天に強く願った時だった。
向こうでティエンとカグムの、凄まじい言い争いが聞こえた。驚くことに、両者は剣を交えているではないか。
あれほど、ユンジェの仇を取ろうとしていた彼が、カグムを捉えた途端、標的を変えた。
一体どうなっているのだ。味方ではないのか。ジセンは唖然としてしまった。
「しっ……しまった」
ハオが止血の手を進めながら、顔を引き攣らせる。
「カグムを行かせたら余計、状況が悪化するに決まってるじゃねえか。ったく、どいつもこいつも、すこぶるメンドくせぇ! 臨機応変に状況を見ろよ!」
その間にもティエンとカグムの言い争いは続き、賊から目を放してしまう。
それを見逃す輩達ではない。賊の一人はカグムの背を狙い、リオを担ぐ賊はティエンの頭目掛けて斬りかかる。
各々それを回避すると、リオを担ぐ賊が動いた。
「小娘、邪魔だ」
ついに暴れるリオがお荷物になったのだろう。
その身を投げ、苛立ちと共に柳葉刀で彼女を斬る。寸前でティエンが体を受け止め、二人の体は仲良く地面へ転がった。柳葉刀は二人の後を追い、振り上げられる。
「リオっ、ティエン!」
ジセンの叫びが合図であった。
最初のコメントを投稿しよう!