魚の骨

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魚の骨

漸く家の中に入った。 『ただいまーー』靴を脱ぎ居間の電気を点ける。 『……まだ帰ってないか』俺は机上にある母からのメモを手に取る。出前チラシを見ながら電話を掛ける。 『もしもし、和食御膳二人前お願いします』 ガサゴソとする音で起きた。母の帰宅まで堺吉成の歌番組を見ながら寝てしまったみたいだ。 『ぐっすり寝てたわね。ご飯食べた?』 母の藤山唯が仕事から帰ってきていた。ハッとし時計を見たが三十分も経ってなかったから安堵した。 『出前とったからもうすぐ来ると思うよ』 『どこのにしたの?』 『好きだから魚魚の和食御膳にした』 『あそこの美味しいよね』 ワクワクしている母。歌番組は堺の出番になり、俺は食い入るように見ていた。 『あっ! ニュース見なきゃ』チャンネルを変える母。 『えーー。何で変えるんだよ! いい場面だったのに』 丁度インターホンが鳴る。 『いいじゃない。それよりご飯の準備しといてね……』颯爽と玄関に行く母。俺は渋々準備した。 『どーーも』 支払いが済んだ、母が食事を持って居間に戻ってくる。 『美味しそぉ。さぁ、食べましょ』母も席に着く。 『いただきます』 程良く焼き上がり、ふっくらしたホッケの身を頬張る母。余程、お腹が減っていたのだろう。体力も使う仕事だったよなと母の仕事を考えながら食べていた。 『合唱部はどう?』 『順調。大会優勝も期待できるって。林先生が言ってた』 『良かったわね! お母さん大会応援行くからね』 『ありがとう……ああっ!!』目を見開き、俺は母を見た。 『な、なによ! いきなり大きい声だしてぇ』 『重大報告があって!』
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