アイル・ビー・バック

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 そうして次の出し物も堪能して廊下に出ると、文化祭の楽しそうな雰囲気の中、なにやら不穏な慌ただしさを感じる。一部の生徒がしきりに無線で連絡を取り合っている。文化祭の実行委員の生徒のようだ。なにかトラブルでもあったのだろうか。すれ違いざまにそのやりとりに耳を傾けると「――不審者が―――」「カメラを―――」「――の服装は―――」などと聞こえてきた。ふうん。まったく怖いな。もうほとんど1周楽しんだし、そろそろ帰るか。  階段を降り一階に着くまでに、先ほどの実行委員のような生徒を何人も見掛けた。こんな日だというのに、ほんと大変に思う。  あと少しで校舎から出られる。そこで、後ろから声を掛けられた。ガタイのいい若い男性。見た目的には体育教師だろうか。前に来たときにはこんな人はいなかったと思う。恐らく僕が前に来てから今年までの間に赴任してきたのだろう。無視しようかとも考えたが、彼の後ろにいた人物からさらに声を掛けられる。こちらは顔に覚えがある。以前からいる、この学校の体育教師だ。 「すみません、事務室までご同行いただけますか」  言葉は丁寧だが、それでいて有無を言わせぬ威圧感がある。 「以前出入り 禁止にしたはずですよね。なぜまた来ているんですか」「今度は通報すると言いましたよね」「そのカバンの中、見せていただけますか」「これはなんですか」「また階段から盗撮ですか」  僕のバッグからは、何枚ものベストショットを収めたデジタルカメラが、発見された。
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