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「ずっと、辞めてたんですけとね。
何だか今日は、落ち着かなくて。
さっき買ってきちゃいました。」
目の高さに掲げていたずらっぽく笑い、そのまま俺に差し出した。
渡されて、反射的に受け取ったものの、どうすれば良いのかわからずに、「あの、八木さん?」訊ねると視線がぶつかった。
「ミツさんが、預かってて下さい。
別に、吸いたいわけじゃなかったんです。
手元にあると、また吸ってしまいそうですし。
捨てていただいても構いませんから。
私も、着替えてきますね。」
事務所を出ていく八木さんの背中を見送り、預かったタバコと悠真を交互に見た。
「これ…どうしよう。」
「終わるまで預かっといたら?
後で返せばいいんじゃない?」
「うん。そうだよね。」
その通りなのだが、あの言い方だと、返しても迷惑なんじゃないかとも思えた。
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