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「…で、お見合いをぶっ壊したと?」
「はい、まあ…」
それから休憩室へ紀子さんに連れられて昨日の話をすれば、彼女はおかしそうに笑い声を上げた。
「いやぁよくやったわ蜜香ちゃん!小野寺の驚いた顔が目に浮かぶっ」
「やばいですよね、私両グループのトップを敵に回したんですよ…」
社長とは結ばれたものの、お見合いをあんな風に壊して…その後のことを思うと胃が痛いんだけど。
「だーいじょうぶよ、心配しなくたって」
「そんなこと言われたって…久我会長には私の家族もお世話になったっていうのに、迷惑しかかけてないんですよ…?」
「迷惑?」
「はい…うちの借金の肩代わりどころか、息子の結婚と小野寺グループへの面目も潰して…」
え、改めて考えたら私本当やばいことしたんじゃないの?
冷静に考えてみれば、余計に昨日の出来事に背筋が凍る。
「あら…そんなこと気にしてたの」
「そんなことって…!」
そんなことどころか、私の今後の人生に関わることなんですけど!?
だけど、私の心配とは裏腹に紀子さんはケロッとした表情で口を開いた。
「蜜香ちゃん…唯斗がなんでオネエになったのか聞いた?」
「オネエになった理由…?聞きましたけど…」
確か、会長からお見合いをさせられるのを避けるためにオネエになったって言ってたよね。
「じゃあ蜜香ちゃんとの出会いの話は?」
「…私との出会い?」
そのセリフを聞いて、私は首を傾げる。
なんの話だ…?
「なるほど…」
紀子さんはウーンと唸った後、チッと軽く舌打ちをすると、いつもよりワンオクターブは低い声で呟いた。
「…あの野郎、大事な話してねぇな」
「え?」
「蜜香ちゃん、あなたちゃんと聞いたの?」
「聞いたって…?」
「今までお見合いを断りまくってた唯斗が、なんでいきなり飛び込んできた蜜香ちゃんとの縁談を二つ返事で承諾したのか、よ」
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