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福は中々寝つけなかった。
寝てしまったら、もうそのままこの場所で目覚めることはない。
でも、幸には会いたい…
幸にちゃんとありがとうを言わなくちゃ…
そう思うと、福はいつの間にか深い眠りの底にいた。
「福、大丈夫?」
幸の柔らかい指先が福の耳をかすった。
「うん、大丈夫だよ。
皆にちゃんとさようならを言えたから」
福は泣くのを必死に堪えた。
最後は明るく笑って別れたい。
そうじゃなきゃ、幸は前へ進めない。
「福、本当に行っちゃうの?」
幸の方が泣いていた。
また、妹と離れる寂しさを思い出しているのだろう。
「幸、泣かないで、私も泣かないから…
明日になれば、幸はまた普通の日常に戻るの。
私の事なんて覚えていないんだよ。
だけど…
幸が今のことを忘れてしまっても、これだけは伝えたい。
幸は、これから福の要素がたくさん入った幸になるってことを。
だから、福の事を思って泣いたりなんかしなくていい。
だって、幸の中に福はいるんだから…
本当の意味で、幸と福は一緒になったの…
だから、私は寂しくない。
だから、幸も泣かないで…」
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