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すると、それが功を奏したようで、徐々に収まっていく大音波に、女は体勢を整え、再び向かうべき方向へと翼を広げた。なるべく逆風を浴びないよう、かなり速度を制限しながら。
「…………」
無言のまま、感情の無い無表情になって女は飛ぶ。
彼女は、既に心身共に限界であった。だからこそ、心から少年を求めていた。自分の苦労を肩代わりしてくれる、その存在を。
「ハヤク……ハヤク行かネば……っ!ぁっ、イ、今おッパいはダメだァ……!」
尋常でない吸引力を発揮する存在を胸に抱えて、ふらふらと航路をずれながらも飛行する。
目的地の郷は、まだ遠いーーー
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