26人が本棚に入れています
本棚に追加
悠土が図書室を出ると、廊下の向こうから姉が走ってくるのが見えた。
「こんな処にいた。もう、あちこち捜し回ったんだから」
ごめん、と、悠土は謝った。
「図書室で何をしてたの、」
「サーカスを観てた」
未希子は図書室の中を覗いた。
「何も無いじゃない。おかしなこと云って」
怒って悠土を振り向く。あれ、と、何かに気が附いて、悠土の額の中央を触る。
「ここ、どうしたの。こんな痣、あった?」
悠土は笑った。全身がむず痒くなった。
「千里眼だよ」
「え?」
「俺は千里眼の持ち主なんだ」
訝(いぶか)るように自分を見る姉に、何でもないと云って、悠土は歩きだす。ふとズボンのポケットを探ると、白い羽根が入っていた。まぎれもなく、天使の羽根だ。
【 終 】
* 最後までご覧下さりどうもありがとうございました *
最初のコメントを投稿しよう!