夢見ない女子高生

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クラスメートのアイドル談議や誰々がカッコイイだのにまるで見向きもせず、今日もひたすら新しい煎餅の味を考えていた そこにフワッと薫るバニラビーンズ 甘い匂いに女の子達はたちまち色めく 「兜塚さまよ!」 学校一のイケメンと名高い兜塚庸一が爽やかな笑顔で立っていた 「やぁ、みんなおはよう」 「「おはようございます」」 私の機嫌はたちまち急降下する (男が甘ったるい匂いさせてんじゃないわよ!) 悲しいかな兜塚の席は隣だったりする 「おはよう鶴田さん。今日も香ばしい香りだね」 (うっせ!黙れエセ爽やかケーキ野郎がっ) 心の中で悪態をつくものの外見は完全シカト 「兜塚さま、また新作ができたんですね」 「昨日のテレビでおじ様を見ました」 次々に話しかける女子にニッコリ笑って頷いた 「恥ずかしいんだけどね、父が新作発表するたびに取材がきてうちはただのケーキ屋なのにね」 王子様の笑顔を振り撒き、首を傾げる姿に女子は黄色い声を上げ、周りの女子に反比例して私は機嫌を悪くした 兜塚庸一の父は世界的に有名なパティシエの兜塚健一だ ぶっちゃけ私達は幼なじみだったりする 恋愛小説なら鉄板ともいえる 未だクラスの女子に囲まれて爽やかな笑顔を浮かべている庸一をちらりと横目でみて私は机に突っ伏し幼い頃を思い出していた
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