エピローグ

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 わたしの手が固く握られた。  温かくわたしの全てを優しく包んでくれる大きな手。この手は決して離すまい。ずっと付いて行く。行き着く先が地の果てとなろうとも。  夕刻のグラデーションに染まる空を、アキアカネが二匹、繋がって飛んで行くのが見えた。  わたしはトンボに、そっと語り掛ける。  想いは、叶ったよ。  わたしはあなたと同じ。  決して引き返さない。振り返らない。前だけを向いていく。  今、わたしの手を握るこの人と一緒に。 「おじさん」  振り返った彼に、わたしは微笑んだ。 「愛してるわ」 ――俺もだ。  音にならない言葉を、聞いた気がした。 了
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