プロローグ

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 トンボが、好きなの?  そうだよ。  わたしの問いかけに優しく応えてくれた彼は、高校社会科教諭という肩書を持っていた。  彼の持ち物にシンボルのように描かれるトンボが、わたしの目にとても印象的に映った。 「トンボというのはね、常にホバリングしていて、決して後ろには下がらない。 不退転のシンボルとして戦国の武将たちに愛された虫と言われている縁起の良い虫なんだよ」  彼の専門は、日本史だった。  日本史を学び、武将を愛する。 それが、あなただった。  わたしも、トンボを愛してみようと、思うの。 永遠に叶わぬ、届かぬものに手の伸ばす切なさと苦しみを、解放するために、わたしはトンボを愛してみようと思うの。  
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