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「私が好きなのは……霧島くんだけだよ」
優しい彼女は、一つ一つ丁寧に言葉を選んでくれた。
そして、俺の不安を見抜いていたのか、一瞬でその不安を打ち消すような言葉をくれた。
嬉しいとか、そんなレベルは超えていて。
幸せ過ぎて、にやけそうになってしまった。
「覚悟しておいて下さいね」
「え……?」
「この先、手放すつもりはないですから」
彼女の素肌に触れるのは、一度だけ関係を持ったあの日以来だ。
伸ばした手を見ると、震えていた。
緊張している自分に気付く。
こんなことは初めてだった。
そんな俺の手に、彼女は自分の手を重ね指を絡めた。
そして、俺の目を真っ直ぐ見つめながら微笑んでくれた。
ちょっとしたことにも、すぐに気付いてくれる。
俺の緊張を見抜いて、手を握りしめてくれる。
情けない俺のことを、真っ直ぐ受け止めてくれる。
そんな細やかな気遣いが嬉しくて、有り難かった。
あぁ、もう、この人には一生かなわないな。
今まで生きてきた中で、最も満たされた夜だった。
何度も何度も、唇が腫れるほどにキスをした。
この時間が永遠に続けばいいのにと、本気で願った。
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