幸せはこの手の中に

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「可愛いって言われるの、嬉しくないの?」 「嬉しくないですよ。特に、樹さんにだけは言われたくない」 その瞬間、霧島くんの鋭い瞳に、私は一瞬で捕まった。 彼から目が離せなくなる。 次の瞬間、唇が引き寄せられる。 そして唇が重なると、もう他に何も考えられなくなる。 息も出来ないほどのキスが繰り返され、その度に私は甘い声を漏らした。 「んっ……」 キスだけで、おかしくなりそう。 もっと、触れてほしい。 そう思ったのも束の間、彼の唇が離れていった。 「もっと、欲しかった?」 「……っ」 「でもこれ以上は、ここではしない。俺も昨日はお預け喰らったんだから、いいですよね?」 「……」 そうだ。 昨日は私が何もせずに寝てしまったから、霧島くんからすればお預け状態だったんだ。 今の私よりも、昨日の霧島くんの方が辛い状況だったに違いない。 「……やっぱり、怒ってるんだ」 「普通、怒りますよね」 今朝の霧島くんの笑顔は営業スマイルだったのだと、今更思い知らされた。 「でも、すぐに許しましたよ。樹さんが寝言で可愛いこと言うから」
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