幸せはこの手の中に

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霧島くんからプロポーズをされた日から、二ヶ月が経過したこの日。 私は前島室長に呼び出された。 会議室の扉をノックすると室長の声が聞こえ、私は室内に入り用意された椅子に座った。 「どうしたんですか?わざわざ会議室で話なんて……」 「まぁ、座れよ。コーヒーも飲んで」 「ありがとうございます……」 室長の様子が明らかにおかしい。 まず、彼がコーヒーを淹れてくれることなんて今まで一度もなかった。 そしてこの神妙な表情。 よそよそしい雰囲気。 ……嫌な予感しかしない。 「今日は、良い天気だな」 「そうですね」 「天気予報では雨マークが付いていたけど、外れたな」 「そうですね」 「永里は雨の日は好きか?」 「好きでも嫌いでもないです」 「そうか。あ、コーヒー飲んでみろよ。実は豆を取り寄せたんだよ。俺最近コーヒーにこだわってて……」 「室長。時間もあまりないので、単刀直入に話して頂けますか」 無表情のままでプレッシャーを与えると、室長はようやく気まずそうに口を開いた。
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