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「……なんか俺、めちゃくちゃカッコ悪くないですか」
「え?どうして?」
「……実家の庭で野菜育てるとか、俺のキャラじゃないし」
そう言いながら、本気でふてくされている霧島くんを見て、思わず吹き出してしまった。
「何笑ってるんですか」
「だってキャラじゃないとか言うから……」
確かに、職場であんなに毒を吐いていた霧島くんが、トマトを大事に育てているところなんて誰も想像出来ないだろう。
私でさえ、霧島くんのお父さんが教えてくれなければ、知ることは出来なかった。
「霧島くんにも、可愛い一面あるんだね」
「可愛いとか言わないでほしいんですけど」
「だって、私のためにトマト作ってくれたんでしょ?」
そう言うと、霧島くんは照れくさそうに拗ねて私から視線を逸らしてしまった。
否定も肯定もしない。
その態度で、すぐにわかってしまう。
霧島くんのお父さんが言っていたことは、決して作り話ではないのだと。
拗ねる霧島くんを可愛いと思ってしまうのは、きっとどうしようもないほど好きだからだろう。
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