幸せはこの手の中に

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「……寝言?」 「やっぱり覚えてないんだ。まぁ、覚えてなくていいですけど」 私は寝ながら一体どんな言葉を口走ってしまったのだろう。 「私……なんて言ってたの?」 「寝ながら俺の名前呟いてましたよ。冬汰くんって。しかも、何度も」 「えっ……」 「寝言なら、自然と呼べるんですね」 ニヤリと笑う霧島くんに対し、私は顔を引きつらせながら苦笑いを浮かべることしか出来なかった。 寝言でしか名前を呼べないなんて……我ながら呆れてしまう。 「下、戻りたくないですね」 「え?」 「とりあえずここに避難してきたけど、下戻ったらまたいろいろ質問攻めされそうで面倒くさい」 霧島くんの家族にいろいろ質問攻めされるのは、私は決して嫌ではない。 ただ、あと少しでいいから二人きりの空間を満喫したいとは思う。 私は今夜札幌へ帰らなければいけない。 きっと帰る前にイチャイチャ出来るのは、この時間しか残されていないだろう。
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