二章  許処で君が

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 ちょうど五十番目の歌だ。いつ死んでもいいと思っていたのに、逢って、愛を知って、永久に愛しい人と共に在ることを願ったうた。  驚いた様な声を出すから、何が違うのかと顔を上げた。 「おの?」  僕の風邪がうつったのかと思うくらいに、顔を真っ赤にしていた。大丈夫かと声をかけようとしたら、いきなり布団に顔を押し付けた。そのまま頭を抱えて唸り出す。一体どうしたというのだろう。  しばらくして、ようやく少しだけ顔を上げると、まだ少し赤い頬を微笑みに緩ませる。布団の上で指先が触れて、ほんの少しだけ絡んだ。 「……んーん。なんでもない。がんばるから、待っててね」 「――……うん」  結果的に破らなくて済んだ約束を、今度こそ自分の意志で守ろうと思う。そんな小さな決意が伝わったらいいと、目を見て頷いた。
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