猫は思う

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 そんな俺がこげ太として真妃と生活して十年。真妃は高校一年生になった。高校に上がる少し前に性懲りもなく小さな白猫を拾ってきて「名前は大福にする」と言って母親を困らせていた。毛並みが真っ黒の俺とは違い、真っ白だから大福……。真妃の名づけセンスは相変わらず酷い。  結局大福はこの家の猫になった。オッドアイの大福は子猫の割にふっくらしている。段ボールに捨てられていたと真妃は話していたが誰かがこっそりコイツの世話をしていたのかもしれない。大福は俺に「こげ太兄ちゃん! こげ太兄ちゃん!」とまとわりついてくるのだが、最高にウザい。とりあえず尻尾で適当に遊んどいてやる。その内疲れて寝るだろ。  網戸越しに夏の始まる匂いがする。じわじわと気温が上がっていく。猫の体には優しくない季節だ。なんでこの世界には夏と冬があるのだろうか。春と秋だけでいいだろ。もっというなら春だけでいい。ぽかぽかして気持ちいいし。昼寝にはもってこいだ。  衣替えもすっかり終わって半袖で毎日学校へ行く真妃を見送る。テニス部に入った真妃は日に日に黒くなっていく。まるで俺みたいだ。  俺は全身黒の毛並みではない。首元に三日月を横にしたような白い模様がある。「ツキノワグマみたいでかっこいいね」と真妃が褒めてくれた模様だ。俺がかっこいいのは知ってる。だって俺だからな。今も昔もモテるのは変わらない。自慢ではなく事実だ。     
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