すべてはメールから始まった

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 「さて、どうしたものか」  いまだにどうするべきか決めあぐねていた。どちらを選べばいいのか。正直、どちらも選びたくはない。俺が選ぶということ自体荷が重い。なぜ彼女たちは同じタイミングで行動を起こすのか。どちらかが先なら「先約が」で済んだのに。  考えがまとまらないうちに学校へ着いてしまった。あああああもう。どうするよ、俺!  今日は文化祭だ。祭りだ。楽しいはずだ。だが俺は今日が憂鬱で仕方がない。それもすべては昨日のメールが原因だ。  文化祭前日。昨日の夜のこと。そろそろ寝ようかというころ、俺のスマホにまるでタイミングを計ったかのように、二通のメールが同時に届いた。  一通目、同じクラスの水瀬愛佳からのメールだった。 〈こんばんは。もう寝ちゃったかな?明日のことでメールしたんだけど、もしよかったら明日一緒に回らない?もう決まっている人がいるなら断ってくれていいからね?どうかなと思って!返信待ってるね。〉  はああああ!?マジか、おいマジか。。水瀬ー!!うっそマジか俺誘われてるじゃんか!えーマジかマジか。やべ、にやける。落ち着け、俺。  正直な感想はこんな感じ。だって水瀬はクラス、いや学年でも指折りの美人で頭も良くて優しくてなんかいい匂いして、誘われて嫌な奴なんているわけがない。  彼女と出会ったのは入学式のときだ。ただ単に、席が隣だったから話すようになった。彼女はどんな他愛もない話も笑って聞いてくれてほんとそれだけで惚れてしまうレベル。二年になっても同じクラスでまた席が隣で勝手に運命を感じていたのは秘密にしたい。  さて、もう一通だ。二通目のメールは唯一の後輩の知り合いである桜木美琴からだった。 〈先輩、明日良かったら一緒に回りませんか?いや、私的には回るべきだと思うんですよね、絶対。まあこんなこと言うとどうせ先輩は「俺に何のメリットが?」とか言うんでしょうけど、明日は明日だけの限定の私ですから!ここ大事なポイントですよ!何が限定なのかは明日のお楽しみということで。連絡待ってまーす。〉  桜木、こいつもか。      
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