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「相川さん、今日の中夜祭って見に行く?」 「うん、そのつもりだよ」 「だったら、ええっとその、……俺大声企画にでるから。見てて欲しいんだ」  大声企画。それは二日に渡る文化祭一日目の最後を飾る企画であり、全校生徒の前で思いの丈を叫ぶというものだ。内容はなんでも良いのだが、青春真っ盛りの高校生にとってそれは格好の告白の機会という訳で。  それだから、猫っ毛の男子から発せられたその言葉に、話し相手の少女よりも早く反応したのは彼女以外のクラスメイトだった。 「ついに佐渡が……!」 「大声企画に出るって事はそういう事だよな!?やべー!ムービー録る用意しとかねえと」 「やっとどう見ても両想いなのに告白しないヘタレな佐渡と鈍感な相川が結ばれる日が来るのね……!」  その興奮はクラス中に広がり、二人の一挙手一投足にその場の全員か注目していた。  ――いつもの様に彼女と話すだけで緊張でいっぱいいっぱいの佐渡とマイペースな相川は気付いていなかったが。 「良かった、相川さんが見に来られなかったらどうしようかと思ってたから」 「どうして?」 「どうして、って。いやその、えーと……あ、もう委員会の時間だ!ごめん、相川さん。俺行ってくる!」 「うん、行ってらっしゃい」  佐渡が逃げた。鈍感な相川はその事にも気付かず「佐渡君ってプリント配布係じゃなかったっけ」等と、首を傾げていた。そんな相川の周りにクラスメイトがわっと集まる。目を白黒させる相川に、彼女の親友である大森奈美がうっすらその目を潤ませながら興奮気味に語り掛けた。 「相川!あんた……その、やったわね!」 「えっ、奈美ちゃん?何を?」 「何を、ってほんっと鈍いわね。大声企画を見に来て欲しいって事は……つまり、佐渡が告白するって事よ!」 「ええっ!?」  鈍感な相川でも佐渡が告白するという意味は分かるらしい。その反応に大森が満足気に頷くと相川がごくりと唾を飲んで続けた。 「い、一体誰に……?」  ――その瞬間、ざわついていた教室が一斉に沈黙した。 「相川……あんた、それ本気で言ってんの?」 「奈美ちゃんは佐渡君が誰に告白するか知ってるの?」  全員が頭を抱えるしかなかった。そうだ、相川はこういう奴だ。  
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