第1章:朝

1/1
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

第1章:朝

はぁっ、はぁはぁ… 足をバタバタさせる。 底に足はつかない。 黒い水が顔を覆う。息苦しい。 流れが速く、抗えず流されていく。 咄嗟に流れてきた丸太のようなものを掴む。 水を飲んでしまい、息がうまくできない。 (・・・・っ苦しい) 手をもがくように動かし、水をかきわけると やっと顔が水面に出た。 (助かった!) 口を思いっきり開いて息を吸い込む、閉じていた目を見開いた。 次の瞬間 (…っ!?) 目の前に巨大なコンクリートの塊が迫ってきている。 高層立てのマンションかビルのような鉄筋コンクリート。 それはどんどんこちらに向かって流れてくる。 避けることはできない。 背筋が凍る。 あと10秒もしないうちに、ぶつかる。 巨大なコンクリートは猛スピードで近づく。 (…っ!お願いやめてっっ) ぎゅっと目を瞑る。 「はぁ…はぁ…」 背中を冷たい汗が流れる。 夏樹はベッドの上でガバッと起き上がった。 布団を掴む指先は震えていた。 時計を見ると真夜中の2時だった。 毎晩、同じ夢を見る。 全身がガクガクと震える。 寒気がする。 部屋は静まり返っていた。 もう1度眠りに着くことが怖い。 夏樹はため息をついた。 胸が締め付けられるように痛かった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!