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第1章:朝
はぁっ、はぁはぁ…
足をバタバタさせる。
底に足はつかない。
黒い水が顔を覆う。息苦しい。
流れが速く、抗えず流されていく。
咄嗟に流れてきた丸太のようなものを掴む。
水を飲んでしまい、息がうまくできない。
(・・・・っ苦しい)
手をもがくように動かし、水をかきわけると
やっと顔が水面に出た。
(助かった!)
口を思いっきり開いて息を吸い込む、閉じていた目を見開いた。
次の瞬間
(…っ!?)
目の前に巨大なコンクリートの塊が迫ってきている。
高層立てのマンションかビルのような鉄筋コンクリート。
それはどんどんこちらに向かって流れてくる。
避けることはできない。
背筋が凍る。
あと10秒もしないうちに、ぶつかる。
巨大なコンクリートは猛スピードで近づく。
(…っ!お願いやめてっっ)
ぎゅっと目を瞑る。
「はぁ…はぁ…」
背中を冷たい汗が流れる。
夏樹はベッドの上でガバッと起き上がった。
布団を掴む指先は震えていた。
時計を見ると真夜中の2時だった。
毎晩、同じ夢を見る。
全身がガクガクと震える。
寒気がする。
部屋は静まり返っていた。
もう1度眠りに着くことが怖い。
夏樹はため息をついた。
胸が締め付けられるように痛かった。
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