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するどい打球音と共に沸きあがる歓声。
しかしそれもやがてため息に変わる。
「ゲームセット!」
審判の声が響いた。
――最後も勝てなかった…。
「あぁ~やっと終わった!」
「なぁこれからラーメン食いに行こうぜ。」
――なッ!おい!お前ら悔しくねえのかよ!
そう突っ込んでやりたい。
ベンチではしゃぎ出すチームメイトをがっかりした表情で見る。
日差しが強く暑い夏の日。
たった今、中学最後の試合が終わった。
「翔!」
名前を呼ばれてそちらを振り向く。
「負けたな…結局中学では勝てなかったな俺達…。まぁ勝つ気でいたのも俺とお前くらいのもんだったけど…。」
いつものしかめっ面が今は寂しそう言ってきた。
相沢 翔(アイザワショウ)。
そして石田 哲也(イシダテツヤ)。
彼らの中学野球は今日幕を閉じたのだった。
哲也に会ったのは2年前。
俺達はすぐに息が合った。
「なあ、お前高校で野球やんの?」
石田は荷物を片付けながら口を開いた。
「切り替え早いなおい。今まで泣きそうになってたくせに。」
翔は少し笑みを浮かべながら石田をからかう。
「うるせえな。で、どうすんだよ?」
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