新聞配達の怪異

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 僕は高校1年の時から、朝だけ新聞配達のバイトをしている。  何故、朝だけかって?  そりゃぁ、学校でバイトは禁止されていたし、夕刊を配る頃は、まだ、僕は学校で部活や課題をやっているからね。  だから、バレないように知り合いのおっちゃんに頼んで、朝刊配達のバイトだけさせて貰ってたんだ。  僕の担当区域は、閑静な住宅街で、配る家が結構密集している所が多い。  それでも、朝刊配達って、朝刊とかいいながら、深夜二時前くらいから配りだすんで、いくら街路灯が多くても、最初の頃はビクビクしながら配ってた。  ま、それも、慣れちゃえば、どうってこと無くなって、恐怖心なんて無くなっていたんだけどね。  それに、僕が配る担当の家の中で、一軒、必ず僕から手渡しで朝刊を貰ってくれる、おじいちゃんがいたんだよ。  僕がその家に新聞を配るのは、いつも大体、四時半くらいになっちゃうんだけど、雨の日も寒い冬の日も、必ず門の所で待っていてくれる。  しかも毎日、「ご苦労様」と、一言だけ言って、冬は温かく、夏は冷たい缶コーヒーをくれるんだ。  もうね。  その優しさが、すげー嬉しくって嬉しくって。  新聞配達って、結構ハードなんですよ。  重たいし、一回じゃ自分の配達範囲の分は、到底配り切れないから、二回、三回に分けて配達するわけなんだけど、その都度、お店に糞重い新聞の束を取りに行っては出ての繰り返し。  だからこそ、あのおじいちゃんの優しさが身に染みて、「よし! 明日も頑張るぞ!」って気にさせてくれてたんだ。
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