第1章

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 美しいおみ足で俺の隣を歩いていった看護婦さんはすんげぇイイ香りをまとっていた。刺激的なお姿と甘い匂いにやられて俺の真横を通った時は心臓が止まるかと思った。こんな看護婦さんになら点滴が腕から外れて漏れ出したって腹にガーゼを置き忘れてしまったって、血液検査で血管を探れずに何度も刺し直されたって構わねぇ、ぶっとい注射だって大歓迎とか思っちまうのは男だからしょうがないだろう。俺のコートを着て、ボタンを締めながらデカイ胸を俺のコートの中にしまいこんだ。なんだか少し残念なような気がしないでもない。 「ねぇ、お兄ちゃん!」  看護婦さんが裸にコートを着ているという、男がやれば逮捕コースまっしぐらの恰好をしたことを確認して俺は模亜那の目から手を離した。不思議だよな。男が全裸にコートを着ると変質者扱いで速攻通報物件なのに、女の人がやれば、痴女なんだがなんだか許してしまいそうになる。 「わぁ、猫さんだ!」  ようやく解放された模亜那は何度か瞬きをして光の具合を調節すると、俺のコートを着たピンク色の髪の看護婦さんの頭部の獣耳に気がつくと歓喜の声を上げて近寄っていった。 「猫さんですよぉ」  模亜那と目を合せるようにムチムチとした太ももをゆっくりと折り曲げる看護婦さんは、猫耳に向かって手を伸ばす模亜那が触れるように頭を傾けた。 「模亜那! 触ったらダメだろ」  全裸にコートの丈は膝丈ぐらいだったが、しゃがむとコートの丈が上に持ち上がってしまう。ミニスカートのような恰好になった看護婦さんを見ていいものか迷ってしまう俺は至って紳士思考だろう。……さっきはばっちりと湯気にまとった裸を見てしまっていたが。目のやり場に困る俺は、ドアの中を確認してから、模亜那の元に近寄った。看護婦さんが居た場所は本当に風呂場で、ヒノキかどうかはわかんねぇけど、木製の浴槽には白濁色の湯がなみなみとはられているし、シャワーもあっし、シャンプーとかなのか、看護婦さんと同じすげぇイイ香りがした。 「お兄ちゃんも触ってみる?」 「お兄さんも触りますかぁ?」  模亜那に猫耳を触らせてあげているヤサシーイ看護婦さんは、その姿勢のまま俺を上目遣いで見上げてきた。俺が立っているから当然なのだが、下フレームのメガネの上から、髪色と同じピンク色の長い睫越しに俺を見つめてくる。 「さ、触ってもいいのか?」  実はさっきから気になってしかたがなかった。
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