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湿気を帯びた夜も、車の窓を開けて走り抜けると、まだ少し、心地がいい。
仕事帰りに実家へ寄り、ZZRから自分の車に乗り換えて帰宅すると、自宅一階の店に明かりが点いている。
駐車場でエンジンを三分程回して車から降り、デッキに上がって店のドアを開け、
「……」
眉をひそめつつ、店内へ入った。
「お兄ちゃん、お帰り」
カウンターの中に立つ愛が俺を出迎えた。
いつもの時間、いつもの風景。
だが。
「お前、何で今日も店を開けた? 明日は」
「いいじゃない」愛は俺の話を遮り、
「夕ご飯、できてるわよ。お手拭きどうぞ」
リュックサックを下ろし、愛を軽く睨みながら手拭きを受け取る。
今夜は何やら珍しくコース然としている。
まずは実家の菜園で採れたとおぼしい豆類とレタス、トマトのサラダが出、さっぱりとしているが濃厚な味わいのほうれん草のクリームスープと続いた。
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