ただいま、お兄ちゃん

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 見下ろしてみた世界はいつも通りに動いていて、人間は時計ばかりを気にしては忙しそうにしている。  あたしもその中の1人だった。  ううん、ちょっと違う。だってあたしはまだ中学2年生。  大人みたいに忙しいっていうことは、経験していない。  経験、出来なかった。 「おーい、詩月」  あたしは面倒そうに呼びかける彼を振り返る。  やけに毛並みのいい黒猫。  この世界に紛れるなら、猫の姿が好都合とか言ってた。  何も縁起の悪いとか言われている黒猫にしなくてもいいのに。  可愛くない。白がいい。  正体が天使ってのは、秘密事項。 「始めようか」 「……うん」
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