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「ずっと、待ってた…………」
堰を切ったように涙が流れ出し、視界がぼやける。
周りには忘れたふりを続けてきた。
待ってるわけないじゃん、て。
でも、本当はーーーー
「待たせて、本当にごめん」
苦しげな謝罪の言葉と共に、懐かしい彼の唇の感触を瞼に感じた。
「もう絶対離れない」
航輝さんはもう一度強くわたしを抱きしめた後、 やさしいキスをくれた。
ーーーー夢じゃない。
わたしの最後の恋は、終わってなかった。
潮騒を聴くたびにざわめいていた胸を、もう誤魔化さなくてもいいんだ。
終わった恋は忘れなければいけないと誰もが言う中で
愛し続けるのは苦しかった。
見返りは求めないと決めていても
どうしようもないほど虚しくて寂しい夜を何度越えただろう。
でも、そんな日々とはもうお別れだ。
だって。
彼は戻ってきてくれた。
さよならを言うためじゃなく、わたしの隣にいるために。
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