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青いね
7階建てのビルから、眺める景色は最高だ。
ここは、田舎。適度な田舎。田畑が多いわけではない。住宅が妙に密集して、うぞうぞと地表を覆っている。スーパーとか、コインランドリーとか、白っぽい建物がぽつぽつと並ぶ。
そんな田舎にポツンと建つ、7階建てのビル。いくつかのオフィスと塾と眼科が入っている。私のオフィスは、このビルの向かいの、2階建ての狭い建物の中。
お昼の休憩のときに、こっそりと道路を渡って、この7階建てに入る。
この町では多分比較的新しくて、この町特有の嫌な黒ずみが少し、すくない。
屋上の扉は施錠されている。
しかし、鍵は持っている。
このビルの、真ん前に落ちていたのだ。
交番に届けるつもりでずっと持っていて、ふいに、何かの拍子に、なぜだか忘れたけれど、この屋上につながる扉の鍵穴にさしてみる気になったのだ。
気が狂っていたのだと思う。
狭くて、汗臭くて、平気でセクハラしてくる上司のいる、大嫌いな私の仕事先で、働き出して3年で、すっかり嫌気がさしていたのだ。
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