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あこがれの白バイ警ら隊に入隊して、まもなくのこと。
宙王(ひろお)は高速をおり、なつかしい道へ入った。
このあたりは、まだ自分が交通課の巡査だったころに担当していた地区だ。
広い市道と、細い旧道が、ゴミゴミ入りまじる、見通しの悪い道。
昔は化け物の名所だったとも言われる、うらさびしいあたり。
見通しが悪いがゆえに事故も多い。
以前は、ここで、よく点数をかせがせてもらった。
宙王には白バイ隊員になるという夢があった。評価は、つねに高くなければならなかった。
同僚たちは、よく言ったものだ。
「さっきのは大目に見てやってもよかったんじゃないか? 見てたけど。ちゃんと停まってたぞ」
「甘い。甘い。いいんだよ。あれぐらい厳しくしてやらないと、やつらはわかんないんだからな」
「あんまり、やりすぎるなよ。恨み買うぞ」
「肝に命じとくよ」
笑って、とりあわなかった。
自分たちだって、違反とは言いきれないようなドライバーにも、よく違反キップを切っている。
ボーナスの査定にかかわるからだ。自分たちの小遣いのために庶民の金をむしりとっているのだ。
どっちが身勝手なんだか。
宙王のは、もっと志が高いのだ。
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