本屋さんと具なしのチャーハン

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本屋さんと具なしのチャーハン

「お疲れ様」  夜九時を回り店終いをしたした人魚書店から店員が去っていく。  いつも通りの夜のひとときを前に、本屋さんはいつものように夕飯の支度をしようと台所に立った。  冷蔵庫になにかあるだろうと開いた読子は眼をぱちくりさせる。 「あっちゃー」  冷蔵庫に残っていたのはマヨネーズとかち割り氷だけだったからだ。肉も野菜も保存食もない。  明日の昼には次の配達が届くし、極論を言えば魔女である読子は食事などしなくても気だるいだけの特殊な体である。  それでも食事を欠かすことは読子にとっては苦痛だった。ヤサグレていた時期にそれで痛い目を見ているため彼女にとってトラウマの一つである。  別に大飯喰らいと言うわけでもないし、酒ならあるので塩を肴にそれで散らすという手もある。  それでもなにか腹におさめないと気分が悪いと、読子は食材を探す。 「今朝はパンだしお昼はカプメン……やっぱり昨日のアレかあ」  思い返すのは昨夜の乱痴気騒ぎ。乱痴気と言っても二毛作(ばっこん)ではなく酒池肉林の方である。  くれはら同人絡みの知人が押しかけてきてホームパーティめいた大盤振舞をした結果、冷蔵庫のモノを使い切ったのだろう。     
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