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 黒っぽいクローゼットで、当時の私にはとても大きく、妙な重厚感がありました。とはいえ、材質は安っぽい。  子供ながら(これはひどい部屋を与えられたものだ……)と思いました。  体力が有り余っている時分とはいえ、なかなかの過密スケジュールで、帰ってきたらもうヘトヘトでした。  大広間での騒がしい夕食会の後、芋洗い状態で風呂を済ませて、さほど夜も更けていないのに部屋に戻された上に、自分たちで布団を敷かされて強引に就寝させられました。  いくら疲れているとはいえ、そんな時間に寝られるはずがないでしょうに。  無論、どこの部屋でも恒例の枕投げが開催されました。そして、ある程度騒がしくすると先生からの注意が入り、一度は点けた灯かりを消されてしまいました。  すると始まるのが、これまた恒例である怪談です……。  得意な生徒がまずは名乗りを上げ、先導される形で始まりました。  隙間無く敷かれたデコボコの布団の上に寝転がって薄くて重たい掛布団に包まり、ドキドキ、ワクワクしながら怪談話を語り合うのですが、私はそのとき、ドキドキもワクワクもせず、ただただハラハラするばかりでした。  当時の私はひどい怖がりで、怪談は大の苦手でした。陳腐なホラー映画でさえも悲鳴を上げて泣き喚いてしまうほどに。     
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