飽くなき衝動

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すると父は意外なことを口にした。 「真凛。それはとてもいいことだね。人は食材として最高だ。それを知ってこそ、お前の辿る運命を誇ることができる。人を食べることで品質が落ちる部分は、死ぬ1年前から取り返すことができる。食べ物を穀物と野菜だけに切り替えればいいからね。それまでは人を食べなさい」 その時、初めて父に褒められた。 機嫌よく微笑んだ父に連れらたのは、キッチンだった。 そこに大きな鍋があり、何かが煮込まれていた。 父が、その中を見ろというものだから、近づいて凝視した。 煮込まれていたのは母の頭だった。 「母さんの頭で出汁をとったスープ。母さんの腹筋ステーキを食べてみよう。御馳走だぞ。お前が成長したことを祝うとしよう」 私が最初に食べた人は母だった。 私は不思議と悲しみや恐怖などマイナス感情を抱かなかった。 私を含め、人は食べ物なんだ。 そういう意識がこの時に植え付けられたからだと思う。 この中学時代の過去があって今の私がいる。 私の中では人生最大の決意をした日。 何度この日のことを思い出したことだろう。 今でもまるで昨日のことのように思い浮かぶ。
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