食材への志願

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そんなことを考えながら物思いに耽る私を厳しく叱りつける人がいる。 その人はクラスの文化祭実行委員、安藤ちゃんだった。 「真凛ちゃん! 出し物を考えないといけないんだから真面目にしてよ! もうみんなも意見を言って!」 文化祭を2か月後に控え、出し物を決めるリミットが近づいているらしく、ヒステリックになってきた。 文化祭なんてくだらないことで、どうしてムキになるのか理解に苦しんだが、それが学校というものだからしょうがない。 どうせ私は23歳までに死ぬんだから、社会に出るための準備は全く必要ないのにね。 「例年、うちら調理科は模擬店を出店しているんだけど、今年もそれでいいですか?」 私は調理科のある学校へ進学した。 それは中学時代に初めて父に許可された、人を食べることに専念するためだ。 レストランに行っても人を調理した料理を食べることができない。 だからといって大学生が自炊するレベルの料理を食べてもしょうがない。 私は、一流の腕で作られた人の肉を食べたいと思ったのだ。 父がフレンチのシェフをしているのも私が考えたことと同じ理由からだと聞いた。 突き詰めて考えると行き着く答えは同じなんだと実感した。 父から一流の人料理を作ってもらうのも悪くないけど、いつも父の手を煩わせるのはよくないと思っている。 自立しないといけない。 という思いが強かったのだと思う。
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