第1章

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それまでとは違い、ヨシ子は少し悔しげに、語尾を強めた。 幼い子供が行方不明なら、事件事故にあった可能性が大きい為、非公開捜査は始めるが、成人の場合、家を無断で出て行っても、何処かでフツーに暮らしているのだろうと、やはり思うし、げんにそのパターンは多い。 しかも、ちゃんと「家をでます。帰って来ます」と書き置きまでしているのだから、犯罪性はないと思ったケーサツ官を責めることは出来ない。 行方不明者全てを捜査していたら大変である。 「で?どうなりましたん?」 「どうもこうも待ってるしかおまへんわ。そしたら、ちょうど1年後、ひょっこり帰って来たんです」 「1年ですか。何処行ってたんやろ」 「宮崎で日雇い労働してた言うてました」 「九州宮崎ですか。家出した訳はどない言ってました」 「特になーんも言ってなかったと思いますわ。いくら聞いても 『別に』とか 『1度、家出たかってん』とか、そんな言い訳しか言わなかったと思います」 「それは28年前、平成元年ですよね。 何月ですか?」 「4月の中頃、13か14日か、どっちかや思います」 「4月の13か14に、突然姿を消して、次の年の、やはり4月に帰って来はったんやね」 「そーです」
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