第1話 いばら姫

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 どうしてこんなことになってるんだろう。さっぱり意味がわからない。  俺の視線の先では、女の子が二人、戦っている。  一人は、ちょっと目のやり場に困るくらい露出された脚に、高いヒールのサンダルを結びつけ、くっきりはっきりの目元が印象的なギャル。  もう一人は背中しか見えないけど、その黒く艶やかに流れる髪と、凛とした佇まいから、大和撫子という言葉を思い起こさせた。  戦っているといっても、罵り合いとか、殴り合いをしてるってわけじゃない。カードゲームでもラップでもない。  ええと――髪と茨で。  他に説明のしようがなかった。実際そうなんだからどうしようもない。       ギャルの金髪とも呼べる明るい色の髪は膨れ上がってうねり、対する大和撫子の周りにはいつの間にか現れた茨が蠢き、両者はにらみ合いを続けている。  付け加えるなら、歌舞伎でもプロレスでもない――と思う。他には俺以外誰もいないし。
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