道すがら出遭った話…。

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…車で道に迷った。 目の前に見えるのは一方通行の看板。 看板の通り右へと向かって曲がってみれば、また右に曲がる看板にぶちあたる。 そうしていくつか曲がってみれば、結局もとの道へと逆戻り。 …これでくり返すのは何度目か…。 中心街へ向かう細い路地、駅へと向かう近道だと思い曲がってみればこのざまだ。 いつになったら出られるのだろう。 そうして何度目かの右回りをくり返したところ、ふと、ある家が目に入った。 それは、路地裏にある、ビルとビルのあいだにくっついた小さな家。 随分たつのか、壁にはツタがはびこり、ガラス戸もずいぶんと古めかしい。 …またこの家か…でもいっそ、人がいるならここで道を聞くのもありかな? 車を路肩に停め、家の敷地へと入って行く。 ぼろぼろの石の門、地面には雑草が生い茂り、一階平屋建てのこの家には、はたして本当に人が住んでいるのかとあやぶみながら戸口までいったとき、俺は一つ気がついた。 戸口に隙間がある。 指一本分の隙間。 …これは開けろということか? そうして好奇心が勝り、その隙間に指をかけ、一気に戸を開け…そして俺は息を飲んだ。 …そこには、墓石が並んでいた。 床に敷き詰めるように並んだ大量の墓石。 平屋建ての、仕切りも無いような薄壁の家の中にただただ収められた大量の墓石。 その側面には、人の名前と、数年後の日付が書かれており、その異様さに俺は目をみはり…。 *** 「ふーん墓石ね…で、君はそこで自分の名前でも見つけたのかい?」 夕暮れ時、玄関先に立つ僕と友人。 冗談めかしつつそう言う僕に、彼はいっぱく置いてから視線を落としてこう言った。 「…いや、なかった…みんな一、二年以内の年月が書かれたものばかりだった。」 それを聞き、僕は小さく笑う。 「なら大丈夫じゃないか。無事帰って来れたんだし…でも土産もなしになんでそんなこと…。」 そこまで言って、ふと気がつく。 では、どうして彼はここに来たのか。 どうして僕の家でそんな話をするのか。 そうして顔をあげると、いつしか彼が僕の顔を、じっと見つめていることに気がついた…。
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