第六章 彼との遊戯

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「……なんつー顔してんだ、お前は」  夜になって亮一が店に訪れると、また先日同様外でたばこを吸っていた千春は、盛大に顔をゆがめた。 「……あってそうそうひでぇ言いぐさだな。千春。いつも通りいい男だろうが。……あと、さぼってんじゃねぇ」 「鏡を見てから言え、鏡を。あとヤニ休憩くらい自由にさせろや。ちゃんとタイミング見てんだから。……ったく、お前今日休みじゃなかったのかよ」  持参の携帯灰皿に(こういうところが、この男のまじめなところだ)吸殻を押し付けてから、千春は亮一の肩を引いた。 「んな顔で店に出たら、ホストの志気に関わるだろうが……お前、ちょっとこっち来い」  そんなひどい顔をしているのだろうか?……自分としては先日同様、完全に取り繕えているつもりだというのに。  千春はそのまま亮一を人気がない店の裏まで、連れて行った。 「……うおっ」  人の気配に気づいた黒猫が、慌てて目の前に横切っていって、足元を掠められた千春が声を上げた。 「あの猫また来てたのかよ! ったく、いつもいつも店の周辺に糞たれやがって」 「……アキ」 「あん?」 「……いや、何でもねぇ」 (彰広に似てたな。今の猫) 黒猫が前を横切るのは不幸の前兆だというけれど、今、千春と亮一は二人して呪われたというのだろうか。 呪うなら、見かけに似合わずお人好しで世話焼きな千春じゃなくて、自分だけにしておけと、胸の内でつぶやく。 お前の仲間をいじめているのは、俺なのだからと。
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