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「例えばさぁ、最初に読んで貰った北海道マラソンの無名ランナー優勝記事。運痴って、努力して人並み程度。頑張ったって天才には勝てないわけよ。なのに、努力もしたことがない。運動したことすらない。そんなヤツが優勝って……皆、快挙だ快挙だって言うけど、僕からしたら気味が悪いとしか思えないわけなんだよねぇ~」  ヘラヘラとした態度だが、彼の目は笑ってはいなかった。  むしろ、獲物を狙うハンターのようにギラリと光らせ、「なんかさ。器以外、ナニかと入れ替わっているみたいじゃない?」と、口元を歪ませた。  俺はその言葉には何も答えることは出来なかったが、何となく。  本当に何となくではあるのだが、言いようのない不安感が胸の奥をざわつかせたのだった。
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