第3話

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翌日、あたしはその福沢諭吉さんをそっと課長に返そうと、いつもより早く出社した。

東君の話では、出張で早出の時でも藤堂課長は既に出社してたんだとか。

その話は本当で、あたしが出社したときもう藤堂課長は席に座ってキーボードを叩いてた。

この人、いつ寝てるんだろう？

「お、おはようございます、藤堂課長」

声が上ずってしまうのは、二人きりってシチュなんかじゃないはず。

「穂積さん？　おはようございます。こんな朝早くに珍しいですね」

最近、クールビズだのウォームビズだので営業でもネクタイを絞める人が少ない。

勿論、客先ではしっかり締めてるんだろうけど、社内では本当に少ないのに、藤堂課長はいつでもきっちりネクタイを締めてる。

それは朝早いこの時間でも同じだ。

「あの、これ、お返ししようかと……」

そう言ってあたしはそっとお金を入れた封筒を差し出した。