私のなりたかったもの。

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ゴホッゴホッ 真っ白な部屋の中、ベッドの上でむせ返った私は最後の力を振り絞って起き上がる。 「お嬢様!!」 「 美穂!!」 ベッドの横で泣きそうになりながら私の手を握るお父様とお母様、それに執事の向坂。 「 こんな事になってしまって、ごめんなさい…」 私が謝ると、悲しげに目線を下げるお父様とお母様。 私、新井美穂は今までの人生を殆どベッドの上で送ってきました。 産まれた時から体が弱く、先天性の心臓病に免疫不全。 お医者様からはいつ死んでもおかしく無いと言われて育ちました。 けれど、お父様やお母様、向坂を初め屋敷の使用人達の支えもあって何だかんだ20になります。 家はお爺様が興した会社が大当たりして国内屈指の大企業をお父様が継ぎ、お金に関して全く不自由はしませんでした。 そのお陰で莫大な医療費を注ぎ込んで貰い、この歳まで禄に外に出たりしなかったのです。 少しの事で入退院を繰り返す程体の弱かった私も、常に具合が悪かった訳ではありません。 もちろん調子のいい時もありました。 その時に、強烈に感じたのは暇です。 外に出る事も出来ないので、何か趣味を探し出した時には屋敷の使用人達も手伝ってくれました。 読書にはじまり、編み物、折り紙、ゲーム、映画、絵…… 上げ始めたら切りが無いくらいにやったのですが、どれもしっくりと来ません。 そんな時、テレビでたまたまやってた番組に釘付けになりました。 それは、釣りです。 ボートの上で、試行錯誤しながら魚を釣ったサングラスをした男性が、笑顔でピチピチと活きのいい魚を掲げる姿が目に焼き付きました。 コレです!私の求めていたものは!! それからその番組を見ながら、色々と調べました。 そして、どんどんのめり込むうちに、自分でも魚を釣ってみたくてしょうがなくなりました。
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