第四話 夢終日、夢の終わりに…

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…藤が丘学園高等部、文化祭二日目最終日… その日は朝から穏やかに晴れていた。 突然、 大粒の雨がポツリ。またポツリ、と天空より落ちて来る。 そして半分だけ、太陽に雲がかかった。 「狐の嫁入りだ!」 少し年配の女性が、空を見つめて呟く。 「お天気雨?おばあちゃん、狐さんがお嫁に行くの?」 無邪気に問いかけるのは、 彼女の手を握る小学2年くらいの男の子だ。 「ああ、そうだね。とてもお目出度いんだよ。 今日はお稲荷さん作ろうね」 と女性は微笑んだ。 「やった!」 嬉しそうに飛び跳ねる男の子。 雨は優しく、少年と女性に降り注ぐ。 二人はゆっくりと室内を目指した。 「西村貫さんですか?」 その頃、体育館入り口で花屋さんが花束を届けに、 彼の元を尋ねていた。 「はい、僕です」 不思議そうに、彼は応ずる。 「良かった。これ、お届け物です!」 花屋が手渡したのは、 赤、白、ピンクの色とりどりの豪華なガーベラの花束だった。 花屋は説明を始める。 「昨日の夕方、当店に中学生くらいの可愛らしい女の子と、 キリっとした背の高い女性が来て、 あなたに届けて欲しい、と言って頼まれまして。 お名前はおっしゃいませんでしたが、このカードを」 と渡されたカードには、可愛らしい白い狐のイラストが描かれ、 『西村貫様へ 夢に向かって頑張って下さい。影ながら応援しています。            ファン第一号より』 と書かれていた。 花屋は更に続ける。 「ガーベラの花言葉は 『希望』『常に前進』『チャレンジ』『冒険』 そして『究極の愛』『崇高な美』です」 彼は思わず目がしらが熱くなり、花束を優しく抱きしめた。 太陽が穏やかに彼を照らし、雨が優しく降り注ぐ。 それはまるで少女の涙を思わせた。 空には、優しい色合いの七色の架け橋がかかり始めた。 ~完~
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