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夜来る鬼
君島麗奈(れな)との邂逅は、真夜中でした。
住宅地にぽつねんとあるコインランドリー。そこは、近くに駅もコンビニもなく、殺風景で、まるで味気のない場所にありました。
闇に光る蛍と言ったら、情緒的過ぎますでしょうか。しかし、本当にそのくらい静かで、暗い所なのです。室内は三十平米くらいです。私はそこで、いつものように、ワイシャツや下着を洗いながら、週刊誌をめくっていました。
中ではラジオが流れています。毎週、この誰もいない時間帯にやってきては、乾燥までをして帰ります。
家は、もっと駅寄りにあるマンションです。この時間ですから、さすがにもう妻と娘は寝ているでしょう。ですから、帰宅後は起こさないように気を配りながら、シャツにアイロンをかけます。
教師という職業柄、身だしなみには気をつけているのです。
ごく普通の、幸せな家族だと思います。私自身、今に満足しています。これ以上は、望み過ぎというべきです。
それでも、時折ガラスに映った自分を見ては、ため息を溢します。そこには、四十才を過ぎた野暮な男が映るだけですから。
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