【第2章】

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 昨晩はエロティックな春子の肉体に溺れて、深夜4時くらいまで頑張ってしまった、その影響だ。飲まず食わずの激しい運動で、その上の睡眠不足。そこからの駅までのダッシュは28歳のメンズでもさすがに堪える。  今からどんなに急いでも、10時に千駄ヶ谷のオフィスには着けそうもない。明彦は、事務所の中でも一番年が若い事務員の村瀬由香に遅れる旨のLINEを打った。  さて、新宿に着くまでの間に、自分の置かれた状況に想いを馳せてみる。  出入りの会計事務所として、決して逆らう事の許されない、月宮電設の経営陣と、それと対決している春子。  新城も自分も、結論的には、経営陣の言うとおり、工事会計を導入するしかない、という事で意見は一致している。要は、春子をどう説得していくか、というのが、全員の共通の課題だったはずだ。  それが今、自分の軽率な行動で、予断を許さない状況になってしまっている。  工事会計を導入しないよう運動する事の見返り、などという名分で、春子と肉体関係を持ってしまったことは明彦のただでさえ、しんどい板挟み状態をより悪化させてしまった。  もし五十嵐の工事会計派に与すれば、春子を裏切る事となる。肉体関係まで持って、春子を見捨てれば、春子は明彦をただではおかないだろう。明彦との関係をバラし、契約の解除まで持っていくかもしれない。     
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