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【第1章】
橘明彦と新城雅弘が月宮電設の事務所から出ると、
7月中旬、
まだ梅雨明けしていないとは信じられない程の強い日差しが照りつけ、
二人を襲った。
目も眩まんばかりの強い陽光にフラフラするが、
月宮電設が使用しているエアコンは、
電気工事を生業にしている会社にしてはかなりお粗末なそれで、
事務所の中は蒸し風呂のような暑さだったため、
外に出てもさほど強烈な暑さを感じる事はなかった。
どころか、
密閉された空間から解放されて、
幾分か涼しく感じる程でもあった。
さはさりながら、
そんな蒸し風呂のような屋内に閉じ込められていたので二人は水でも浴びたかのように汗だくだった。
特に暑がりの新城はしきりにハンカチで顔の汗を拭っているが、
拭っても拭っても汗が滴り落ちてくる。
中年が汗だくというのは見ていて気持ちのいい絵づらでは決してない。
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