Last.22 『等身大の木暮梨世』

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――ピンポーン 「はぁい」 ピンポンピンポン………… 「…………うるさ」 そしてその夜の安寧を切り裂くように連打されるドアのチャイム。主はすぐにわかる。 「兄さん……わかったから、本当に近所迷惑」 まだご飯を飲み込んだばかりなのに、玄関に行ってドアを開けると風のように僕に抱きついてくる。 だから、僕は梨世ちゃん以外受け付けないんだけど。 「なおーっ! こども園オープン日決定記念パーティやろうよ~」 「……僕の幸せの夜ご飯を邪魔しないでくれない? 今何時だと思ってるの? ここ日本だからね」 「あははっ、禅さんこんばんは」 「あ、梨世さんこんばんは~!」 そしてこども園の運営は兄さんだっていうのに。 だけど……この自由過ぎる兄に出会えたことは、血の繋がった兄弟がいたってことは、僕にとっての紛れもなく嬉しい出来事だった。 「禅さん、コーヒーでいいですか?」 「もちろーん! あ、ブラックね」 「わかってますって!」 梨世ちゃんももう兄さんの扱いに慣れたもんで、こんなにも馴染んで、僕の過去を受け止めてくれる。 「こんな時間にコーヒー飲んだら俺寝れないかもっ」 「兄さん……ニヤニヤしながら言うのやめて」 こうして、僕と梨世ちゃんの周りに……兄さんがいることだって、自然になってくるんだろう。 そのうち紗柚ちゃんと結婚して、幸せに暮らすんだろう。 「……ねぇ、尚くん」 「ん?」 「私がいつか言ってた……禅さんと紗柚ちゃんも一緒に食卓を囲う未来は、すぐそこにあるね」 「……うん……!」 あぁ、そうか。 やっぱり……梨世ちゃんが見ている未来は、いつだって幸せだったんだ。
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