序章・ある少年の自問自答

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「……本当にこのままでいいのか?」 「良い訳がないだろ。現状を正しく認識しろよ。知っているか? 人間ってのは社会的動物なんだよ。人間関係を上手く築いて生きていくもんなんだ。そんなことも知らないのか」 「知らないね。そんなどうでもいいこと。俺が知っていることと言えば、お前の携帯のアドレス帳がゼロ件だと言うことくらいだ」 「なんでそんなこと知っているんだよ」 「知らないわけがないだろ」 「それもそうか。ともかく知っているのなら話が早い。どうするんだよ。俺の周りには人間関係ゼロだぞ。家族にすら見放されている」 「友達の一人もいないのかよ」 「いないね。俺と友達になろうなんて言う酔狂な輩はどこにも」 「いらないってのか? 友達」 「いらないわけがない。欲しくて欲しくてたまらないよ。言っておくがな、俺は孤独に耐え切れるほど屈強な精神を持っていたりはしないぞ」 「この寂しがりやめ」 「うるさいな。そもそも人が社会的動物云々って言ったのはお前じゃないか」 「そうだった。で? それならなんで作らないんだよ、友達」 「作れないんだよ。作れるんだったらさっさとそうしている」 「お前は馬鹿か?」 「馬鹿に見えるか?」 「鏡を見ろと言いたいね」 「だから今見ているだろ」 「確かにな。とにかく、だ。友達が作れないと言うのなら、どうしてそれが出来ないのかを考えろよ。お前の頭に脳味噌は詰まっていないのか?」 「知らないね、そんなこと。一度だって俺は、自分の頭の中を見たことがない」 「人体構造的にそれを見ることは不可能だからな」 「まあ、俺の頭の中の話はどうでもいいんだ。で? どうして友達が作れないのかだって? そんなことは簡単だろう」 「簡単なのか?」 「簡単過ぎて難しいとも言える」 「ははっ、馬鹿みたいな言葉だな。笑える」 「殺すぞ。とにかくだ。どうして友達が作れないのか? それはな、俺の周りに、俺の友達になれるような人間が居ないからだ」 「人のせいにするのか」 「人のせいにするのさ。少なくとも、俺は俺自身に問題が有るとは思っていない」 「クズめ」 「お前がそれを言うか」 「俺だからそれを言うんだろ? まあ確かに、お前みたいなクズ人間と友達になろうなんて思う、酔狂な人間はどこにも居ないだろうな」
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