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そんな中、彼は生まれた。まだ幼いと言えるほど若い母親は、難産でその命の花弁(かべん)を真っ赤に散らした。赤ん坊は、生まれたばかりにも関わらず美しい事が見て取れたが、その肌は琥珀に染まり、耳は僅かに尖っていた。
「長老、母親が亡くなりました」
「そうか……。この子は、生きていても良い事があるまい。いっそ……」
「いいえ。この子は俺たちが育てます。一人娘の生んだ子です!」
「私たちが……立派に……」
まだ年若い夫婦が、言葉とは裏腹に泣き崩れながら決意を語った。
赤ん坊は、男の子だった。光の道を歩いて行けるよう、『シャイン』と名付けられた。けれどその名が呼ばれたのは、育ての親が生きている間だけだったという。
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